【インド旅行記】ムンバイの洗濯場ドービーガートに行ってみた&夜行バスに置いて行かれた話
こんにちは。
インド旅行記ムンバイ編Part2。
この記事では世界最大の規模を誇る洗濯場、インドはムンバイのドービーガートに行った話と、このインド旅史上最大のトラブルに遭った話をお届けします。
前回の記事はこちらから。
インドの今を象徴する世界最大の洗濯場・ドービーガート
次の目的地への交通手段を確保したところでついにドービーガートへ向かう。
まず、ドービーガートとは洗濯・クリーニング業を代々営む世帯が集中したエリアのこと。
今ではインドでもカースト制度について触れることは禁じられているが、かつては「他人の服を洗濯する人」=「不浄」「汚れた仕事」とされカーストの中でも最下級クラスに位置していた。
インド国内のドービーガートの中でもムンバイのそれは規模が大きく、また、映画「スラムドッグミリオネア」のモデルとも言われているため広く知れ渡るようになった。
ドービーガートへのアクセス
ドービーガートに向かうには、まず路線電車で「Mahalakshmi駅」(マハラクシュミ駅)を目指す。
ムンバイの路線は北に向かうか南に向かうかの2択なのでシンプル。
チャーチゲート駅から見ると北へ向かう電車に乗る。
Mahalakshmi駅の改札を出て道路へ渡るとすぐ、ドービーガートを見下ろせる展望デッキに到着する。
後ろのビル群とのコントラストが衝撃:ドービーガート
デッキに着くや否やこの光景が飛び込んでくる。
貧富の差がよりリアルに混在しているこの国でそれが色濃く1枚の写真に映し出されるような場所。
今も約200世帯がここに住み、ここで働いている。
町中のホテル、病院、企業、個人宅から集められた服が一斉に干されている光景は圧巻。
手洗いをし、すすぎ、石に叩きつけたり振り回して脱水する、という超原始的でアナログな方法を今も残し、親から子へ受け継がれている。
写真を撮ったり、中を案内するガイドもいるものの、
「この人たちにとっては生まれながらの家と立派な仕事場だから、観光地とは呼んではいけないかもしれない。」とも思う。
意外と、もっと閉塞的で危なそうな最初のイメージは覆された。
1日のうち最も忙しい朝を過ぎると、ある程度色で分別された洗濯物が風になびく。
一仕事終えると子供たちは遊んだり、大人も昼寝をしたり、自分の身体を洗ったり思い思いの時間を過ごす。みんな優しそうで朗らかな空気が流れる。
とはいえ、何度見てもバックにそびえ立つ近代的なビル群との対比が衝撃的だった。
成長著しいこの国の発展度合いを示しつつも、過去の歴史の名残も垣間見える。
マンション暮らしのエリートかトタン屋根で一生を終える運命を隔てるのはたった数キロ。
でも、そう思うのは家族から受け継いだ仕事に励み、前向きに生きるドービーの人たちに失礼だろうか。とすぐに自分を戒める。
よく言えばライフスタイルの多様性、悪く言えば同じ町の中の格差を一瞬にして感じることができるこの風景をしっかりと目に焼き付け、この場所を後にした。
・ドービーガートはマハラクシュミ駅から徒歩圏内
・展望台から見ることもできるが、坂を下ると中にも入れる
・ドービーガートに行くなら衣服が干され始める正午〜がおすすめ
一路北へ・ジョードプルを目指す
さて、ドービーガートも見れたことでそろそろムンバイに別れを告げる。
夜行バスを買うときに指定されたバス停で待ちぼうけ。
到着時刻を過ぎてもバスが来ないが、
「まあインドなら当たり前か」
と腹を括って待ってた。(実は半分心配してた)
するとバス停で隣にいたおっちゃんに話しかけられる。
「ジョードプル行くんだけどバス来ないんだよ。」
と話すと、「チケットに書いてあるバス会社に電話してやるよ。」と言ってきた。
インドに来てから、基本向こうから話しかけてくるやつほど信用しないようにしてた。
今回も別に何も期待してなかったが、わらにもすがる思いで一応チケットを渡した。
これぞインド!?嘘のような本当の話
ヒンディー語だったけど、おそらく場所と時間を確認してくれてたんだと思う。
電話を切った後、「ここじゃないらしい!」と200Mほど離れた正しいバス停?まで走って案内してくれた。
「遅れてるらしいけどこれで大丈夫だよ」
と、バスのナンバーと、自分の電話番号を書いたメモまで渡してくれた。
なんでこの人はこんなに親切なんだというくらい胸がいっぱいだった。
インドに来て初めて人の優しさに触れたから余計そう思ったのかも。
「ありがとう。ありがとう。」
何度も伝えてお別れした。
あとは気長にバスを待つだけかと思ったら20分後、戻ってきたのはバスじゃなくてさっきの彼だった。
なんか嫌な予感がする。
なんと彼の携帯に電話がまたかかってきたらしく、開口一番、
「バスは君を拾わずに20km先を進んでいるみたいだ!」
僕は「ふぇ?」と意味が分からず理解に苦しむ。
何でもバス会社の言い分は、僕から電話で確認がなく、いつどこでピックアップできるかわからないからバス停の前さえ通らず先に進んだとのこと。。。
※インドの長距離バス会社は、乗る前に通話で場所を確認してはじめて迎えに来るのが常識という非常識をこの時知る。
なぜか向こうからの電話も繋がらなかったよう。
「てか時間通りに正しい場所いたのに意味ないじゃん」
ていう正論は今は通じない。途方にくれるばかり。
でも知らせに戻ってきてくれた彼はまだ諦めようとしていない。
またバスの乗務員に直接電話して何やら抗議している。
何が起きて今からどうなるのか見当もつかない僕は彼を信じることしかできない。
彼は電話を切った後、すごい剣幕で、今話していたことを英語に直して教えてくれた。
- 実は警察出身だった彼曰く、この件は明らかにバス会社に過失がある。
- 今バスを高速道路の道端で止めさせており、僕を乗せるまでそこで待っていろと伝えた。
- さもないと「警察のコネ使ってムショにぶち込む」と脅した。(笑)
- バイクで追いかけて高速道路からはタクシーを手配する。もちろんタクシー料金は僕でなくバス会社側が払うように厳しく言ってある。
まとめるとこんな感じ。
ただにわかには信じられなかった。
置いて行かれたことよりも、彼のおかげでインドのバス会社がしぶしぶながら僕を待っていること。おまけにタクシー代までバススタッフに払わせることができること。インドに来て初めて人の優しさに触れた本当に感謝しかない。
彼の兄弟にバイクを借り、バスを追いかける。
高速道路の手前でタクシー運転手に事情を説明してくれて僕だけタクシーへ乗りこむ。
彼とはここでお別れ。
「もし、バススタッフと揉めたり他にもインドで困ったらいつでも電話しな」と名刺を渡してくれた。
30分ほどでバスが見えた。バス運転手やスタッフは僕に文句言いながらも運転手にお金を払い、僕を乗せたバスは改めて北へ向かい発車した。
怒涛の出来事だった。僕は何をするでもなくただ彼に導かれて夕日が沈むムンバイを後にする。
彼との別れ際に、何でこんなに助けてくれたのかを聞いていた。
「困っている人を助けて、ベストを尽くして、正しいことをしろって神様からも家族からも教わって生きてきたからだよ。」
と当たり前のように返ってきた。
何て実直で親切なんだと言葉が出なかった。
教えをここまで体現して貫いている人が何人いるだろう。
自分はできていないだろう。自分ファーストで何となく生きていただろう。
色んなことが頭を巡った。
冒頭で触れたようにインドではぼったくりや親切なふりしてるだけのやつも多く、基本誰も信じないようにしてきた。
ただ、彼みたいな人に会い「インド人は○○だ」という悪いステレオタイプの浅はかさを知った。良い人もいれば悪い人もいるのはどこの国でも一緒だ。
本気で人助けをしていてブレない信念を持っている人を「その他大勢の悪そうなインド人」と一緒にして疑うのはあまりにも失礼だ。
もちろん全員信じていたら痛い目見るから人を見るセンスを養って自分の感覚に従わないといけない。
インドで夜行バスに見捨てられた話は1つの先入観がぶち壊された感動の出会いを産んでくれた。
・・・でもインドの夜行バスは二度と乗らねえ。
・インドの夜行バスに乗るなら始発ターミナルから乗るべし
・本当に良い人かそうでない人かを見極める癖をつける
ムンバイのまとめ&ジョードプル旅
ムンバイでは今すぐ日本に帰りたくなることのほうが圧倒的に多かった。
でも、スムーズに電車のチケット買えてたら彼にも会えてなかったと思うと、旅の醍醐味を感じる。
ドービーガートも単なる写真スポットとしてだけではなく色々感じることもあり、インドの過去と今が垣間見える印象的な場所でした。